多様な価値観が尊重される社会になってきたことも影響しているのでしょうか、厚労省の調査などに基づく生涯未婚率は1990年と2020年を比較すると、男性で5.626.7%、女性で4.317.5%にそれぞれ上昇しているそうです。2020年以降のコロナ禍があったことを考えると、この数字はもっと上昇していることでしょう。これは、少子高齢化などの社会問題と関連して語られることが多いですが、弁護士が直面する場面で実感するのは、亡くなった方(被相続人)に相続人がいないという場面です。

 被相続人が独身で、子供がいなかった場合、親や祖父母(直系尊属)が存命なら第2順位の相続人となり、直系尊属が亡くなっていても、兄弟姉妹がいて存命中ならば、第3順位の相続人となります。また、兄弟姉妹が亡くなっていても、甥や姪がいる場合には、第3順位の代襲相続人となり、相続が発生します。

 しかし、一人っ子で兄弟姉妹も甥や姪もおらず、親も祖父母も亡くなっている場合、仮に被相続人に伯父や伯母、いとこがいたとしても、これらの人は相続人になりません。

 法定相続人がいない場合、遺産は国庫に帰属すると定められています(民法959条)。では、実際どのくらいの金額がこの規定に従って国庫に納められているのかというと、最高裁がまとめている令和4年度の財務書類(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2023/R4zaimu.syorui.443KB.pdf)によれば、その総額は約770億円にのぼり、記録が残る平成25年から倍以上増えています。この数字は、今後も伸び続けていくのでしょう。

 法定相続人がいない場合でも、亡くなった人の世話をしていた人などが特別縁故者として遺産の一部を譲り受けることもできますが(→参考コラム「特別縁故者による相続財産分与の申立てが認められた事例」)、多くの場合は遺産の一部に限られます。したがって、遺産の国庫帰属を避けるために、もっとも考えられるのは、だれかに遺産を譲る(遺贈する)旨を記載した遺言を作成することです。遺産を譲る相手は親族に限らず、友人や慈善団体等でも構いません。

 一般的に、遺言は「終活」の一環として準備するものという認識が強いと思いますが、「おひとりさま」の場合、その準備は早いに越したことはありません。近年、遺言に関する民法の規定も様々な改正がなされています。当事務所では遺言の作成についてもお受けしておりますし、まずはご相談だけでもお気軽にお越しください。

弁護士村山 圭一郎