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「自分が相続人であり、相続分があると思っていたのに、実は何もなかった…」
1 事実婚(内縁関係)で起こりうるトラブル

 民法が定める法定相続人には順位があり、被相続人の配偶者は常に相続人です(民法第890条)。配偶者以外の法定相続人の第一順位が子で(民法第887条第1項)、養子も含まれます。第一順位の相続人がいない場合、第二順位が親や祖父母といった直系尊属(民法第889条第1項第1号)、第二順位の相続人がいない場合、第三順位が兄弟姉妹です(民法第889条第1項第2号)。法定相続人となるべき人が被相続人よりも先に亡くなっている場合、その人に子がいれば、代襲相続と言って、その子や孫が相続人となります。

 このように、誰が相続人となるかは民法の定めによって決しています。配偶者に関しては、民法第739条第1項が「婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。」と規定していることなどから、あくまでも届出をした法律婚の配偶者に限定され、事実婚(内縁関係)の相手方は含まれません

 現在は住民票の続柄の欄に「妻(未届)」と記載されることもあり事実婚であること公的に証明することもできるようになりましたが、たとえ何十年と事実婚で生活していても、周囲の方が夫婦だと認めていたとしても、婚姻の届出をしていない以上は、法定相続人にはなれないのです。事実婚のままで、パートナーに遺産を残したい場合は、生前贈与をするか遺言により遺贈をするしかありません。なお、この場合相続税よりも高率な贈与税の対象となります。

 事実婚を選択されている方は、遺されるパートナーのことを考えるならば、早いうちから自分の財産を今のパートナーに遺贈する旨を記載した遺言を準備するなどの対策が必要でしょう。

2 甥・姪が独り身で亡くなったケース

 法定相続人の範囲は、上記1で記載したように基本的に配偶者、子、親、兄弟姉妹となります。もっとも、民法には代襲相続に関する規定があるため、兄弟姉妹がいて被相続人より先に亡くなっていても、被相続人から見て甥・姪がいる場合、甥・姪が相続することになります(民法第889条第2項)。

 一方、被相続人に配偶者も子も兄弟姉妹もおらず、親も祖父母も先に亡くなっているが、おじやおばが存命中という場合に、おじやおばは相続人になれるでしょうか?残念ながら、おじやおばは民法が定める法定相続人には含まれません。相続人が不存在の場合、被相続人の遺産は最終的に国庫へ帰属してしまいます(民法第957条)。

 このような事態を避けるためには、事実婚の場合と同様、相続人以外の親族等に財産を遺贈する旨を記載した遺言を残しておく必要があります。なお、相続人が不存在の場合でも、被相続人と生計を同じくしていた者(事実婚のパートナー等)、被相続人の療養看護に努めた者等は、特別縁故者として相続財産の分与を受けられる場合があります。

3 親が再婚した場合の相続における注意点

 親子関係でも気を付けるポイントがあります。

 両親が離婚したり、一方の親が亡くなったりした後に残された親が再婚した場合も、注意が必要です。例えば自分の父親が再婚をして後妻を迎えたとしても、先妻の実子である自分との間では当然には親子関係は生じません。後妻との間にも親子関係を生じさせるためには、婚姻届とは別に後妻と養子縁組の届出をしていなければならず、養子縁組をしていなければ後妻の相続人にはなれないのです。

 親が亡くなった時に、遺産分割協議で一旦存命中のもう一人の親にすべて相続させることとし、両親とも亡くなった際に子供が相続することにするというのは、良くあることです。しかし、子と後妻との関係がよく、血のつながった親が先に亡くなりこのような扱いをしようとした場合、後妻との間で養子縁組がされていないと、先に亡くなった実親の遺産も含めて相続することができなくなってしまいます。

4 まとめ

 大切な人が亡くなってから、自分が相続人ではないことが判明したところで、時すでに遅し。生前やっておくべき手続きを死後行うことはできません。

 亡くなった側も、当然その人に相続分があると思って、手続きをしていなかったのかもしれません。

 相続が発生してから、こういったご相談を受けることがありますが、「生前に手続きしていただいていれば…」と無念でなりません。

 事実婚状態であったり、自分の身の回りで独り身の方がいる場合などは、一度ご確認いただき、必要な手続きをとっていただくと良いのではないかと思います。