「独身で養子を迎えたが、その養子にはすでに子供(連れ子)がいた」

 このような場合、養親が亡くなった際に、養子の「連れ子」は代襲相続人として財産を引き継ぐことができるのでしょうか。

 原則として、養子縁組「前」に生まれていた連れ子には、養親の相続権はありません。しかし、特定の条件を満たす場合には、例外的に相続権が認められるケースがあります。

 今回は、最高裁判例(令和6年)と実務上の重要な判断を交えて、この「例外」について解説します。

1. 原則:なぜ養子の「連れ子」は相続人になれないのか

 民法887条2項ただし書きには、代襲相続(本来の相続人が先に亡くなっている場合に、その子が代わりに相続すること)について次のような制限があります。

「被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない(=代襲相続できない)」

 養子縁組をすると、養子本人は養親の血族(直系卑属)となります。しかし、縁組より前に生まれていた子(連れ子)については、養親との間に直接の血縁関係や法的な親子関係が生じないため、原則として「直系卑属」にはあたらないと判断されるのです。

2. 例外:相続が認められるケースとは?

 令和6年最高裁判決および平成元年大阪高判の考え方を整理すると、例外的に相続権が認められるポイントは、「代襲者が、被代襲者(養子)を通じてではなくとも、別のルートで被相続人の直系卑属であると言えるか」という点にあります。

 具体的には、以下のようなケースで例外が検討されます。

 ① 「被相続人とその兄弟姉妹の共通の親」を介して直系卑属である場合

 令和6年11月12日の最高裁判決(民集78巻6号1377頁)では、兄弟姉妹の代襲相続について一つの規範を示しました。

 それは、「被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属」であれば、相続人となり得るという考え方です。

 (ただし、結論としては、この場合にあたらないとして、相続権は否定されています。)

 上記の図でいうと、亡母Aと亡Bとの養子縁組により亡母Aと被相続人Yはきょうだいとなるが、Xらは、亡母Aと被相続人Yの共通する親亡Bの直系卑属ではないから、Xらの相続権は否定されました。(逆に言えば、Xらが、亡母Aと被相続人Yの共通する親の直系卑属となる場合には、相続権が認められることになります。)

 ② 実の親子関係によって「直系卑属」の条件を満たす場合

 平成元年8月10日の大阪高裁の判断(判タ708号222頁)では、通常、養子の連れ子は養親の孫にはなりませんが、もしその子が「別の血縁ルート(実母など)を通じて、もともと被相続人の直系卑属(孫など)であった」という特殊な事情がある場合、相続権を認めています。

 この判決では、以下の理由から、養子縁組後に出生した「孫2」のみならず養子縁組前に出生した「孫1」にも「相続を認めるのが衡平(公平)である」としています。

* 血統の継続という思想を尊重すべきこと

* 同じ家族として生活しているのに、縁組の「前」か「後」かという一点のみで相続権の有無が決まるのは不合理であること

3. まとめ:複雑な親族関係がある場合は専門家へ

 このように「養子の連れ子だから相続権はない」との原則にも、例外はあります。

 特に、親族内での複雑な養子縁組が繰り返されている場合や、先代からの血縁が入り混じっている場合、「例外」として相続人に該当している可能性があります。

 当事務所で担当した事案(詳細は、下記をご参考下さい)においても、①被相続人(妹)とその兄弟姉妹(母)の親が共通(亡祖父母)であり、②実の親子関係によって「直系卑属」の条件を満たす場合(母を通じて長女と長男が亡祖父母の直系卑属になる)に、連れ子を相続人と認める裁判所の判断を得たことがあります。

* 自分のケースが「例外」にあたるのか知りたい

* 相続人調査をしたが、代襲相続の範囲が複雑で判断がつかない

 このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。複雑な家計図を紐解き、正当な権利を守るためのお手伝いをいたします。

※「うちは無理だ」と諦める前に、まずは実務経験豊富な弊所へご相談ください。

(弁護士 髙井 信也)