1 2024年5月に公布された民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)は、2026年5月までに施行されます。
この法律では、離婚後の「共同親権」が導入されることが注目されていますが、養育費や財産分与・養子縁組に関するものなど様々な改正を含んでいます。
今回は、そのうち、新たに規定された祖父母と孫との面会交流の制度についてご説明します。
2 孫、それは目に入れても痛くないほど可愛い存在だという人も多いと思います。また、近年、共働き家庭の増加に伴い、保育園や習い事の送迎等、育児の一部を祖父母が代わって行っている家庭も少なくないのではないでしょうか。祖父母と多くの時間をともに過ごし、たくさんの愛情を受けることは、孫の健やかな成長にも良い影響を与えることでしょう。
一方、未成年者の両親が離婚することになり、父又は母のどちらかに引き取られた場合、現在の民法766条は、子と父母との面会交流について父母間で協議が整わない場合に家庭裁判所が定めることを規定していますが、祖父母との面会交流についての規定はありません。祖父母が孫との面会交流を求め、家庭裁判所に対して審判申立てをした事案でも、最高裁判所は、「父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、家庭裁判所に対し、子との面会交流について定める審判を申し立てることはできない」旨の判断をしました(令和3年3月29日 集民第265号113頁)。
そのため、祖父母が孫との面会を強く希望していても、孫と一緒に生活している側の親(監護親)がこれを拒否する場合には会うことはできず、祖父母としては、孫と非監護親との面会交流の場に事実上同席するか、孫がある程度の年齢に達した後に孫自身の意思・判断で会いに来るのを待つという選択肢しかありませんでした。
3 新民法には、766条の2が新設され、家庭裁判所が「子の利益のため特に必要あると認めるとき」は、父母以外の親族との交流を実施するよう定めることができることとしています。この規定の「親族」には、「子」の祖父母、兄弟姉妹の他、過去に「子」を監護していた叔父・叔母・従姉などが該当します。
なお、祖父母については、過去に「子」(孫)を監護していたことは必要とされていませんが、家庭裁判所が「子の利益のため特に必要あると認める」ことが要件とされています。どのような場合にこの要件が認められるのかは、今後の家庭裁判所の運用によって明らかになってくるものと思われますが、法務省が作成した制度説明のパンフレットには「例えば、祖父母等とこどもとの間に親子関係に準ずるような親密な関係があったような場合には、父母の離婚後も、交流を継続することがこどもにとって望ましい場合があります」と記載されていることからすると、家庭裁判所に対し、これまで祖父母と孫がどの程度の頻度・内容で交流をし、親密な関係を築いていたのかを具体的に主張することになると思われます。また、「子の利益」のための制度ですので、過去に虐待等の不適切な関わりがあったり、孫自身が祖父母との交流を拒否しているような場合には、面会交流は認められないでしょう。
祖父母と孫との面会交流に関する審判の申立ては、原則として父母が行うものとされていますが、例えば、父母の一方が死亡したり行方不明になったりした場合など、他に適当な方法がないときは、祖父母が自ら家庭裁判所に申立てをすることができます。
以上