2020年7月1日から法務局における自筆証書遺言書の保管制度が導入され、今後自筆証書遺言の増加が予想されます。自筆証書遺言書は公正証書による遺言書とは違い、自分1人で自宅で気軽に作成することができますが、形式的、内容的に法律に則って作成する必要があります。
自筆証書遺言の形式的な有効要件は民法968条1項に規定されています。まず、自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付、氏名を自書、すなわち手書きし、押印しなければなりません(同条1項)。
もっとも、遺言書に相続財産の目録を添付する場合、目録については手書きではなく、ワープロで作成することができます(同条2項)。
それでは、次のような自筆証書遺言は有効でしょうか?
裁判例によれば、遺言書に戸籍上の氏名ではなく通称名を記載した場合であっても、遺言者が誰かが明らかである以上、遺言書は有効であるとされています。
押印について最高裁は、印鑑による印章ではなく、指印による押印であっても遺言書は有効であると判断しています。
そもそも遺言書に押印がない場合はどうでしょうか。民法がはっきりと押印を要求している以上、当然遺言書は無効であるように思えますし、そのように判断した裁判例もあります。
他方で、押印のない遺言書を有効と判断した裁判例もあることから、遺言書に押印がなかったとしてもただちに無効と判断せず、専門家に相談した方が良いでしょう。
年月の記載はあるものの、日の記載がない遺言書について、最高裁は無効と判断しています。また、「○年○月吉日」と記載した場合や、「正月」と記載した場合も無効と判断されています。遺言書の日付は、遺言能力の有無や遺言作成の先後を判断するために重要なので、氏名や押印に比べて厳格に判断されていることに注意が必要です。
このように、形式面だけみても、自筆証書遺言の有効性が争われることが多くあります。また、遺言書が形式的に有効であればどんな内容でもよいわけではなく、遺言書の内容を一義的に確定できること、内容が実現可能であること、法令や公序良俗に反するものではないことが必要です。したがって、自筆証書遺言書の作成や内容の有効性について疑問がある場合には、専門家に相談されることをおすすめします。
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