国土交通省の2017年度の調査によると、不動産登記簿から所有者が判明しない土地は、国土全体の22%あまりで、その面積は九州を上回る約410haと推計されています。このような所有者不明土地が発生する原因は、相続登記の未了が66%、住所変更登記の未了が34%を占めているとされています。

この所有者不明土地問題を解消するため、2021421日、「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立し、202341日以降順次、新制度が施行されます。

新制度においては、不動産を取得した相続人に対し、

・その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられ、

・登記を怠る場合は過料の制裁を科すこととされる

など、今後の相続手続きに影響を与える制度も導入されています。

本コラムでは、その概要をご説明します。

1 所有者不明土地の発生を予防するための仕組みの創設

① 相続登記の申請義務化

不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられ、登記を怠る場合は過料の制裁を科すこととされました(改正不動産登記法76条の21641項)。なお、義務化については202441日から施行されます。

② 長期間経過後の遺産分割の見直し

相続開始から10年を経過すると、原則として、特別受益や寄与分の主張ができなくなります(改正民法904条の3)

③ 「相続土地国庫帰属制度」の創設

相続等により取得した土地で一定の要件を充たすものに限り、10年分の標準管理コストを負担させることを条件に、国庫に帰属させる制度が創設されました(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)。

2 所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み

① 所有者不明土地管理制度の新設(改正民法264条の2)

対象となるのは「所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地」です。すなわち、新たな制度は、管理が必要な土地のみを対象とする仕組みとして構築されています。

併せて、管理が不適当であるために他人の権利や利益が侵害されるおそれのある土地(管理不全土地)について、裁判所が管理人を選任できる管理不全土地・建物の管理制度が創設されました(同264条の9)

② 共有者が不明な場合の共有地の利用の円滑化

共有者の所在等が不明であるために、共有物の変更や管理に支障をきたす場合に、裁判所の関与のもとで、共有物の変更(同2512項)や共有物の管理(同2522項)が可能とされます。また、共有不動産については、裁判所の関与のもとで、所在等不明共有者の持分を他の共有者や第三者に譲渡を可能とする制度が新設されます(同262条の2及び3)

③ 隣地等の利用・管理の円滑化

ライフラインを自己の土地に引き込むための導管等の設備を他人の土地に設置する権利を明確化し、隣地所有者不明状態にも対応できる仕組みが整備されました。

3 まとめ

・土地を相続された場合は、3年以内に登記の申請をする必要があります。

・共有の土地をお持ちで、共有者の所在等が不明な場合、裁判所の関与によって解決できることもあります。

当事務所では、土地家屋調査士や司法書士の先生方とも連携しております。相続手続きはもちろん、土地の名義変更などもお役に立てることがあるかと思いますので、お問い合わせください。

なお、相続に関するご相談は初回1時間無料ですので、相続した土地について疑問やお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。